マンション管理会社交替・委託管理費6割削減までの道のり

マンション管理会社交替・委託管理費6割削減までの道のり

7.仕様書作りと業者選定


08年7月の定期総会後の理事会4期目に、CIPはすぐに見積もりの募集を開始した。同時並行して、管理委託内容の仕様書作りに取り掛かった。
その過程で住民にアンケート調査を行ったところ、植栽や清掃で不満を感じていたことが、明らかとなったので、それらを改善すべく仕様書に織り込んでいった。管理人に対する住民の評価は8割以上が満足していた。管理会社に対する評価は半数はやや満足しており、残りの半数はどちらでもないとやや消極的なものだったが、不満を言う住人は数人しかいなかった。

4月から担当しているフロントのN氏は前任者と同期だが、前任者以上に優秀だったので当マンションの課題を解決してくれるだけの力量を持っているだろうとの期待はあった。また、私はH社の見積に対しては不信感を募らせていたが、管理会社を変更することが必ずしも当マンションのためにはならないだろうと考えていた(管理会社を替えるリスクもある)ので、H社に価格競争に勝って最終段階まで残ってもらい、最終選考会で住民に決めてもらうことを決意した。

当然、現状の悪い点(清掃、マナー悪化を放置、荒れた植栽)は改善するようにH社に申し入れるつもりであった。私はその旨をCIP須藤社長や理事会の主要なメンバーに伝えた。CIP須藤社長はCIPがダシに使われるのではないかとのことを危惧し、反発したが、理事会の総意ではなく私個人の見解ということで事を納めた。実際、I理事長はH社の見積に対する不信感から、管理会社交替を強く主張しており、理事会の中ではH社のままで良いとする意見と、替えるべきだと意見が割れていた。

仕様書作りは3ヶ月延べ4回に渡り、理事会とCIPの共同作業となった。事務管理業務のなかにコンサル業務を設けることや、清掃箇所、巡回場所の追加など従来とくらべて、20%の品質アップを図った。同時並行して募集した委託管理の各業務については、総合管理業務25社、専門業務32社の計57社が集まった。私は平日の帰宅後や土日を利用して、インターネットを通じて、各業務について見積もりの参加を募った結果、総合管理会社5社と専門会社16社を集めた。

一次見積は、総合管理会社22社、専門会社16社が提出し、数日後にCIPが各社と面接し、見積もり内容の確認を含めて折衝を行った。折衝は2日にわたり行われたが、私は初日に立会い、参加各社の反応をみた。専門会社に比べて総合管理会社はどの会社も取りに来たい様子がありありと感じられた。二次見積もりでは専門会社からの辞退が増加したが、総合管理会社からの見積は一次見積から平均で70万円値下げしたものになっていた。(総合管理会社19社、専門会社12社が見積を提出した。)

私はH社に最終選考まで残ってもらいたかったので、理事会のなかで私の考えに最も近いN理事に相談した。N理事は

「私は保守的で管理会社を変更するリスクが大きいと考えるので、H社が価格を下げて現状の悪いところを改善してくれるのなら同社に引続き管理してもらいたい。」

とのことだった。私とN理事はH社のN氏を呼び、一次見積もりでは、総合管理会社の多くがCIP方式での過去の実績から450万円以下で見積を提出してくると想定されたので、その価格以下で提出するように伝えた。
N氏の試算では450万円が赤字を出さない精一杯の価格であるが、その価格で見積を提出出来るかは、社内調整をしないと分からないとのことだった。その後H社の社内では委託管理費を収支トントンまで値下げせざるを得ないなら辞退するべきだとの意見が主流となっており、最終決断は、まもなく行われる社長と10月に交替した新任の管理部長との面談時に下されるとのことだった。 社長と管理部長の面談で社長方針が下された。その内容は

「管理業務を死守せよ。価格面での判断は以後は管理部長に委ねる」

とのことだった。その管理部長はH社内では社長やN氏など同僚から絶大な信頼を得ているようだった。一次見積では私の要求したとおりの450万円で出された。

その後の二次見積では、CIPが総合管理会社各社との折衝の感触から、400万円以下で10社以上が提出することが見込まれたため、N氏に400万円以下で見積を提出しないと書類選考ではH社を残すのが難しいと伝えた。一次見積では24時間総合監視業務が他社と比べて割高だったので、警備会社を変更するなどして30万円以上下げてきた。残りの20万円の値下げは事務管理業務のフロント担当の人件費をまるまる削ったとのことだった。H社は赤字覚悟の399万円で提出した。これで最終選考にH社を残す価格面での口実が出来たが、仕様書作りの過程であぶり出された管理面で改善すべき点をH社が改善してくれないと、H社に今後を任せる気になれなかったので、社内体制を見直すように要求した。

その他の管理会社については、私はインターネットやCIP、雑誌、父などを通じて評価や評判を入手することに努め、逐次、理事会のメンバーにメールで報告した。N社、G社、DC社や管理戸数が5000戸以下の零細管理会社は候補から外したほうが無難だと助言した。価格面から書類選考会では落選としたが、J社、L社は評判やヒアリングなどから他社と比べても突出して品質が高いことがわかり、最終選考に残したい会社だと思った。

08年11月下旬の書類選考会は、CIPが取り纏めた各社の会社概要や提案書の内容も参考にして理事会で行った。 理事会でI理事長は私に書類選考会はあなたのお薦めのところを言ってもらえないだろうかと言った。総合管理会社は400万円以下を提示したH社を含めた4社、専門会社も私が推薦したところが承認された。書類選考会後に、最終選考会で総合管理会社を決定するのに重要なポイントを父が教えてくれた。それは、書類選考会に残った4社が管理している近隣のマンションの管理状況を実際に視察に行くことである。CIPにも相談したら、それは良いので是非やってみてくださいとの返事だった。CIPの視察時のチェックポイントとして、古い掲示がないか、掲示ではがれかけているものがないか、清掃面ではエントランスやエレベータの扉の溝や端に埃が溜まっていないかを見たらよいと教えてくれた。
マンションの住人への聞き取り調査は勇気がいるし、聞いた相手が〔管理人が良い=管理会社が良い〕と短絡的に考えていた場合は、間違った判断になるので、選考する手段の1つとして、見にいくだけでも良いだろうと気楽に考えた。早速、私は理事会のメンバーに近隣マンションへの視察を提案し、第1回目が4名(I理事長、M理事、NM理事、私)、第2回目、第3回目が2名参加(N理事、私)してくれた。

第一回目は11月の理事会が行われた日の午後に行った。この時はH社を除く3社の営業担当に案内してもらった。どのマンションも清掃、植栽、掲示板がきちんと整備されており、この視察では各社とも甲乙付けがたく判断出来なかった。第2回目、第3回目は第1回目に参加出来なかったN理事が是非見たいとの要望があったので、平日の仕事が終わった夜間にN理事と私の車でそれぞれ回った。 第2、3回目は第一回目に回らなかったH社の管理しているマンションを含めて4社分を回った。N社が管理している尼崎の2箇所では、古いはがれかけた掲示板が放置しており、エントランス隅に埃のかたまりがあるのを発見した。また、同社が管理している梅田のマンションは、ワンルームタイプで1階部分にクラブ等の飲食店が雑然と入居しており、ゴミ箱からはゴキブリが出没した。私が呆気にとられていると、N理事は、N社はあまり風紀が良くないマンションも管理せざるを得ないのでしょうと言った。私は最終選考会でこの事実を話そうと考えた。

〔2009年5月13日 更新〕

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